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平成29年の食中毒 事件数、患者数とも減少 病因物質別事件数1位カンピロバクター

2018.03.25発行
 厚生労働省は3月12日、東京都港区の労働委員会会館で薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会(部会長=五十君靜信東京農業大学教授)を開き、平成29年の食中毒発生状況を報告した。
 29年の食中毒事件数は前年比125件減の1014件、患者数は3788人減の1万6464人で、事件数、患者数とも前年を下回った。
 患者数が500人以上の事例は、@和歌山県の763人(1月26日、学校、磯和え、ノロウイルス)A東京都の1084人(2月16日、学校、きざみのり、ノロウイルス)――の2件。
 死者が発生した事例は、@足立区の1人(2月19日、家庭、蜂蜜、ボツリヌス菌)A北海道の1人(5月11日、家庭、イヌサフラン、植物性自然毒)B前橋市の1人(8月13日、飲食店、不明〈8月11日に調理・販売された食品〉、腸管出血性大腸菌)――の3件3人(前年6件14人)。
 病因物質が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのはカンピロバクター・ジェジュニ/コリの320件(前年比19件減)、次いでアニサキス230件(106件増)、ノロウイルス214件(140件減)、サルモネラ属菌35件(4件増)、植物性自然毒34件(43件減)の順。上位5病因物質で事件数全体の82.1%を占めた。
 患者数が最も多かったのはノロウイルスの8496人(2901人減)、次いでカンピロバクター・ジェジュニ/コリ2315人(957人減)、ウエルシュ菌1220人(191人減)、サルモネラ属菌1183人(479人増)、その他(腸管出血性大腸菌以外)の病原大腸菌1046人(477人増)の順で、上位5病因物質で患者数全体の86.6%を占めた。
 原因食品・食事が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのは魚介類の196件(23件増)、次いで肉類およびその加工品61件(19件減)、複合調理食品51件(33件減)、野菜よびその加工品27件(43件減)、魚介類加工品12件(7件減)の順で、上位5食品で全体の34.2%を占めた。
 患者数が最も多かったのは複合調理食品の1546人(960人減)、次いで肉類およびその加工品638人(429人減)、魚介類469人(643人減)、野菜およびその加工品295人(324人減)、菓子類182人(155人増)の順で、上位5食品で患者数全体の19.0%を占めた。卵類およびその加工品は事件数2件(1件減)、患者数4人(102人減)であった。
 原因施設が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのは飲食店の598件(115件減)、次いで家庭100件(19件減)、販売店48件(17件増)、旅館39件(11件減)、仕出屋38件(2件減)の順で、上位5施設で事件数全体の81.2%を占めた。
 患者数が最も多かったのは飲食店の8007人(3128人減)、次いで学校2675人(1830人増)、旅館1852人(898人減)、仕出屋1605人(82人増)、事業場623人(1379人減)の順で、上位5施設で患者数全体の89.7%を占めた。
 都道府県別では、事件数は東京都131件(4件減)、愛知県75件(29件増)北海道64件(10件増)。患者数は東京都2627人(351人増)、愛知県1428人(657人増)、和歌山県874人(757人増)の順に多かった。
 月別では、事件数は9月が114件(31件増)、患者数は2月が2770人(1225人増)で最も多かった。

カンピロ食中毒 悪質事例は告発も

 食中毒部会では、カンピロバクター食中毒への対応や、食品衛生法改正案の概要、広域的な食中毒事案への対応、山形県庄内地域におけるサルモネラ症事例についても報告した。
 カンピロバクター食中毒への対応では、発生事例のほとんどが加熱不十分な鶏肉が原因となっており、食鳥処理業者や卸売業者には加熱用表示の徹底、飲食店業者には加熱用鶏肉の生または加熱不十分な状態での提供中止を指導している。29年の発生事例について都道府県などの報告を基に集計したところ、約半数の事例で仕入れ品に加熱用表示があるにもかかわらず、生または加熱不十分な鶏肉を提供していたことが明らかとなった。
 このため今後、悪質な事例については告発も視野に入れて対応する。出席した委員からは「生レバーやユッケを規制した後、鶏わさなどで鶏肉が生で食べられている。保健所も提供中止を指導しているが、なかなか浸透しない。踏み込んだ対応をしないと広がる一方で、抑えられる範囲を超えてきた」「悪質な事例については厳しく告発をしていくとのことで、一歩というか、かなり前進した。このような事例が出てくると、皆さんが気をつけて方向が変わることを期待している」などの意見が出された。
 広域的な食中毒事案への対応では、昨年夏に埼玉県や群馬県を中心に発生した腸管出血性大腸菌による食中毒事例を踏まえ、今後の方向性について、@国と関係自治体の情報共有の場として協議会を設置。緊急を要する場合、厚生労働大臣は協議会を活用し、広域的な食中毒事案に対応するA感染症法に基づく届け出、食中毒患者データ、遺伝子解析結果の情報を共通IDにより管理し、共有する。必要に応じて国から関係自治体に注意喚起するB自治体の食品衛生部門と感染症部門の両部門共通の調査票や調査協力マニュアルを策定するC遺伝子検査の手法を統一化するD事業者における検食や記録の保存方法を検討するE重要事案については自治体の広報資料の事前協議など、行政全体で整合性の取れたリスクコミュニケーションを行なうFHACCPに沿った衛生管理を制度化し、全体的な衛生管理水準の底上げを図る――などを挙げた。
 山形県庄内地域で発生したサルモネラ症事例では、9月6日から10月18日にかけて、同地域の医療機関でサルモネラO9群検出の患者40人(うち死者1人)が発生。このうち菌株を確保できた32検体からSE(サルモネラ・エンテリティディス)が検出され、同時期に家畜保健衛生所が実施した同地域18養鶏場のサルモネラ汚染状況調査では、2養鶏場の環境検体などからSEが検出された。ゲノム解析の結果から患者の菌株と遺伝的に同一と考えられたが、患者のうち1人は2養鶏場の鶏卵を食べていなかった。また、2養鶏場付設のGPセンターや小売店からはSEが検出されず、患者の喫食状況も記憶があいまいで明確ではないことなどから、今回は食中毒と断定しなかった。
 山形県は今後の課題として、@生食用鶏卵での採卵者の表示義務付けA生食用鶏卵の成分規格の設定B積極的な疫学調査を行なう仕組みづくりCアウトブレイク防止対策を講じることができる仕組みづくり――などを挙げた。
 委員からは「鶏卵のサルモネラ汚染は改善されており、今では1万分の1以下という話もある。実現可能性のある対策について議論を深めていくことが重要である」「サルモネラのゲノム解析などのデータをきちんと取って、食中毒対策に生かす必要がある」などの意見が出された。
 今回の事例が食中毒として報告されなかったことについて、五十君部会長は「行政側の整理が必要だと思う」とし、事務局も「このような事例についても自治体に周知徹底し、疑い事例も含めて今後の食中毒対応に生かしていきたい」とした。



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