厳重な警戒必要 検査体制の強化は継続 香川のAI疫学調査

農林水産省は2月14日、香川県さぬき市の肉用鶏農場で発生したH5N6亜型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に関する疫学調査チーム検討会の1回目の会合を開いた。
同検討会では、発生確認直後に実施した現地調査、遺伝子解析や感染試験による分離ウイルスの性状分析などの結果を報告し、疫学的な検討も行なった。
現地検査の結果については、発生鶏舎が野鳥が飛来するため池に隣接していることなどが報告され、感染試験の中間結果として、感染鶏から排せつされるウイルス量が少ない可能性なども示された。
次回の同検討会では、感染試験による分離ウイルスの性状分析などの結果を踏まえ、感染経路の究明や今後の検査体制などについて検討する。
1回目の同検討会の概要は次の通り。

現地調査等の概要
発生農場の敷地のほぼ中央に、カモ類などの野鳥が飛来するため池があり、現地調査の際も水鳥が複数羽確認された。発生鶏舎はこのため池に最も近い場所に位置していた。
当該農場では、鶏舎の壁の破損部分を補修するなどの野生動物の侵入防止対策が講じられていた。また、従業員が鶏舎に入る際には専用の長靴に履き替えるなどの衛生管理対策が実施されていたことが、管理人への聞き取りにより確認された。ただし、現地調査時、発生鶏舎内にネズミのものと思われる小動物の糞が確認された。

疫学調査のための環境材料等の採取と検査結果
疫学調査のため、当該農場の発生鶏舎以外の鶏舎の飼養鶏の気管スワブとクロアカスワブ、血液、発生鶏舎内の鶏糞が混じった敷料、発生鶏舎近くのため池の水、ため池の近くで確認された野鳥の糞などの計240検体を採材し、鳥取大学でAIウイルス検査や抗体検査を実施したが、すべて陰性であった。
香川県の家畜保健衛生所が、発生鶏舎の飼養鶏10羽について抗体検査を実施したが、すべて陰性であった。

分離ウイルスの特徴
分離されたH5N6亜型ウイルスは、遺伝子解析の結果から、昨年度の冬に欧州で流行したH5N8亜型ウイルスと、ユーラシア大陸の野鳥で循環しているN6亜型(HA亜型は不明)ウイルスが再集合したウイルスであると考えられた(農研機構動物衛生研究部門が今年1月に発表済み)。
昨年11月に島根県で発見された死亡野鳥から検出されたウイルスと、今年1月に東京都で発見された死亡野鳥から検出されたウイルスは相同性が極めて高かったが、香川県で検出された今般のウイルスは、これらウイルスとは明確に区別された。
感染試験の中間結果から、本ウイルスの感染が成立すると(鶏が感染すると)、昨年度までに検出された高病原性鳥インフルエンザウイルスと同様に、鶏に対し高い致死性を示すものの、感染の成立には比較的多くのウイルス量が必要である可能性、感染鶏から排せつされるウイルス量が比較的少ない可能性が示唆された。

ウイルスの侵入時期および経路
①国内への侵入経路・時期
渡り鳥などの野鳥による国内への具体的な侵入経路・時期については、今後、今シーズンの渡り鳥の渡りの動向、海外で検出されているウイルスの情報などを収集・分析し、究明を進めていくこととされた。
②鶏舎への侵入時期・経路
発生鶏舎で死亡羽数の増加が確認されたものの、家畜保健衛生所への届出後にさらなる死亡羽数の急増が確認されなかったこと、発生鶏舎の生存鶏と敷料などの環境材料からウイルスが分離されなかったこと、発生鶏舎の飼養鶏から抗体が検出されなかったことなどが現時点で確認されている。このためウイルスの鶏舎への侵入時期については、現在実施中の感染試験の結果などを踏まえ、検討を進めていくこととされた。
鶏舎への侵入経路については、現時点では不明であるが、発生鶏舎は野鳥が飛来するため池に最も近い場所にあることから、ウイルスが鶏舎周辺に存在し、人、野生動物など何らかの形でウイルスが鶏舎内に侵入した可能性が考えられた。

その他
①検査について
1月10日に香川県の家畜保健衛生所で実施した遺伝子検査に用いた検体について、農研機構動物衛生研究部門でも遺伝子検査を実施したところ、家畜保健衛生所の検査で得られた結果と矛盾しない結果が確認された。
これまでに確認されているウイルスの性状を踏まえると、農林水産省が今年1月15日に通知した検査体制の強化(簡易検査に使用する検体数の増加、確実な採材、経過観察)は、当面の間、引き続き実施していくことが適当とされた。また、今後の検査体制については、現在実施中の感染試験の結果などを踏まえ、検討を進めていくこととされた。
②発生予防対策について
昨年度も、3月下旬に本病の発生が確認されたように、カモ類などの渡り鳥は、越冬のために日本に飛来した後も国内を移動し、また、越冬を終えて営巣地に向かう途中にも国内の各所に立ち寄ることが知られていることから、厳重な警戒を継続する必要があるとされた。
香川県の事例も、発生鶏舎の近くに池があったことから、周辺に池などの水辺がある農場においては、家きん舎周辺にウイルスが存在するかもしれないという意識を持って、厳格な衛生管理を講じていくことが必要とされた。
感染試験の中間結果から、死亡羽数の増加は引き続き主な臨床所見であることから、毎日の健康観察による早期発見・早期通報が重要とされた。

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