鳥インフル 家保と動衛研で検査へ 遺伝子検査対応を変更

農林水産省は、香川県さぬき市の肉用鶏農場で発生した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)で、判定が1日遅れたことを受け、これまでより死亡家きんの検査羽数を増やしたり、家畜保健衛生所での遺伝子検査を当面、茨城県つくば市の農研機構動物衛生研究部門でも並行して進め、簡易検査ですべての検査が陰性の場合でも、農場に毎日の経過観察報告を求めることにした。

香川県さぬき市の肉用鶏農場で発生が確認されたHPAIは、本紙前号既報の通り、1月12日夜までに当該農場と関連農場の肉用鶏9万1876羽をと殺して防疫措置を完了した。死体はペール缶に密閉して15日から一般廃棄物焼却施設で焼却し、22日午前11時26分に完了した。現在のところ、感染の拡大報告はない。
各都道府県では、発生事例を家きん飼養者に伝えるとともに、緊急消毒用の消石灰を配布し、一層の予防対策を呼びかけている。
防疫措置が完了した10日後の25日から、発生農場の半径3㌔㍍圏内の移動制限区域(6農場)の清浄性確認検査(臨床検査、血清抗体検査、ウイルス分離検査)を実施し、結果は陰性。毎日の報告でも異常がないことが確認された30日に半径3~10㌔㍍圏内の搬出制限区域(香川・徳島の両県で19戸、約97万羽)が解除された。今後も、毎日の報告で異常がなければ、防疫措置完了21日後の2月4日24時(5日午前0時)に半径3㌔㍍圏内の移動制限区域も解除される。
今回の発生で問題視されたのは、10日の朝に、当該農場の管理者が、55羽の鶏が死んでいることを香川県東部家畜保健衛生所に連絡し、家保が簡易検査を実施したところ、11羽中3羽(死亡鶏5羽中2羽、生存鶏6羽中1羽)の陽性反応が出たため、家保は同日に遺伝子検査を実施したものの判断ができず、11日に農研機構動物衛生研究部門職員とともに再度、採材と遺伝子検査を実施し、約1日遅れで感染が確認されたこと。
農林水産省・動物衛生課では15日付で、都道府県家畜衛生主務部長あてに「高病原性鳥インフルエンザを疑う異常家きんの届け出を受けた場合の当面の対応について」の課長通知を発信し、異常家きんの届け出を受けた農場の検査では「①死亡家きんについては、現行は5羽以上としているが、今後は11羽以上(11羽に満たない場合は全羽)を対象とした簡易検査を行なう②検体は現行通り、原則として1羽につき気管スワブおよびクロアカスワブのそれぞれを1検体として実施するが、死亡家きんの気管スワブは、検査対象家きんの気管を切開した上でそのスワブを用いる」とし、都道府県による家畜保健衛生所での検査については「簡易検査で陽性の検体が確認された場合には、現行通り家畜保健衛生所で遺伝子検査およびウイルス分離検査を行なうが、その際、採取したすべての検査材料の一部を動物衛生研究部門に運搬する」とした。
さらに、経過観察については「簡易検査ですべての検体が陰性の場合でも、農場には毎日、当日の死亡羽数を含む異常の有無の報告を求め、死亡羽数が通常程度に落ち着くまで経過観察を行なう。この間、必要に応じて簡易検査などを行なう」ようにした。
この当面の対応は、今後、動物衛生研究部門での分離ウイルスの遺伝子分析、感染試験などの結果によって見直されることになる。

これまでのAI発生事例の多くでは、農場周辺に池や小川が存在していたことから、AIウイルスの侵入防止対策では、鶏舎周辺のげっ歯類(ネズミなど)を含む野生動物対策の重要性が指摘されている。このため、防鳥ネットの設置や鶏舎の破損・隙間の修繕、集卵・除ふんベルトの開口部の隙間対策、家きん舎周辺の整理・整頓、樹木のせん定・草刈りと消石灰などの散布、排水溝への鉄格子の設置など、ウイルスの侵入防止対策をさらに徹底する必要がある。
農場に出入りする車両や人・物の対策についても、入念な洗浄・消毒の徹底、専用の服や靴の使用、消毒液の定期的な交換、記帳など、基本的な衛生管理をこれまで以上に徹底するとともに、日常的な鶏の観察を徹底し、異常を確認した場合は家畜保健衛生所に早期発見・通報し、感染の拡大を防止しなければならない。

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