食品衛生法を改正 厚労省が通常国会に提出へ

厚生労働省は、食品の衛生基準などを定めた食品衛生法について、2018年度通常国会で改正案を提出する方針を固めた。
食品衛生法は、平成15年の改正から約15年が経過し、①食品の安全を取り巻く環境が変化していること②調理食品や外食・中食への需要の増加など、食へのニーズの多様化がみられること③輸入食品の増大など、食のグローバル化が進んでいること④食中毒の発生件数は下げ止まり傾向にあり、広域的な食中毒事案や健康食品に起因する健康被害が発生していること⑤2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、国際基準と整合性のある食品衛生管理が求められること――などから、食品安全をめぐる環境変化などを踏まえた食品衛生法の改正の方向性について幅広く議論する食品衛生法改正懇談会(座長=川西徹国立医薬品食品衛生研究所長)でも、「ただちに取り組むことが必要」とし、『健康被害の防止や食中毒などのリスク低減』『食品安全を維持するための仕組み』『食品安全に関する国民の理解促進』をポイントとする提言を11月8日にまとめている。
このうち『健康被害の防止や食中毒などのリスク低減』では、①食中毒対策の強化=フードチェーン全体を通じた衛生管理の向上のため、食肉処理段階での対策強化や、生産段階との連携強化。さらに広域的な食中毒事案に対応するため、厚生労働省、都道府県など関係者間での連携や食中毒発生状況の情報共有などの体制を整備する②HACCPの制度化=HACCPによる衛生管理を制度化(すべての食品事業者を対象に、衛生管理計画を作成し、手洗い励行などの一般衛生管理に加え、事業者の規模などに応じたHACCPによる衛生管理の実施を求める)③リスクの高い成分を含む「健康食品」などによる健康被害防止対策=健康被害防止の観点から、リスクの高い成分を含む「健康食品」などについて、製造工程管理や原材料の安全性の確保のための法的措置を講じ、実効性のある仕組みを構築。さらに、事業者から行政への報告の制度化を含む健康被害の情報収集・処理体制を整備する④食品用器具および容器包装規制の見直し=認められた物質以外は原則禁止とするポジティブリスト制度導入に向け、対象材質・物質の範囲、事業者間で伝達すべき情報やその伝達方法、適正な製造管理などについて具体化する――など。
『食品安全を維持するための仕組み』では、①営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設=現在政令で定める34営業許可業種について、食中毒リスクや営業の実態に応じて、許可対象業種を見直すとともに、営業届出制度を創設する②食品リコール情報の把握・提供=食品等事業者が自主回収情報を行政に報告し、行政が国民に提供する仕組みを構築する③輸入食品の安全性確保・食品輸出事務の法制化=輸入食品の安全性の確保のため、輸出国段階での対策強化として、HACCPによる衛生管理や乳製品・水産食品などの衛生証明書の添付の輸入要件化を図る。また、食品輸出のため、自治体の食品輸出関連事務の根拠規定など、法的な規定を創設する――など。
『食品安全に関する国民の理解促進』では、リスクコミュニケーションの強化として、行政から国民への情報の発信方法や内容を工夫するほか、国民の不安や心配を聞き、食品衛生行政に活用する――など。

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