鶏卵生産者経営安定対策事業に52億円 価格差補てんと空舎延長 平成23年度農林水産省予算

政府は去る12月24日、平成23年度予算を閣議決定したが、農林水産省予算の概算額は前年度比92・6%の2兆2712億円となった。この中で鶏卵価格差補てん事業と成鶏更新・空舎延長事業を組み合わせた新規事業の「鶏卵生産者経営安定事業」は51億8900万円(前年度の2事業合計は50億700万円)となった。

食肉鶏卵課の新たな「鶏卵生産者経営安定対策事業」(51億8900万円。前年度50億700万円)は、鶏卵価格が低落した場合に価格差補てんを行なうとともに、さらに低落した場合、成鶏を淘汰し、長期の空舎期間を設けることにより、鶏卵生産者の経営安定と価格の安定を図るもの。
具体的には、鶏卵価格差補てん事業は、卵価(標準取引価格)が補てん基準価格を下回った場合に、その差額(補てん基準価格と安定基準価格の差額を上限とする)の9割を補てんする。この財源は生産者積立金から4分の3、4分の1は国からの補助となる。
成鶏更新・空舎延長事業は、卵価(標準取引価格)が安定基準価格を下回った日の30日前から、安定基準価格以上となる日の前日までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設けた場合に奨励金を交付する。鶏舎収容可能羽数10万羽以上の大規模生産者は1羽150円、同10万羽未満の中小規模生産者は1羽200円。事業実施主体は民間団体。
食肉、食鳥・鶏卵などの流通合理化に向けた処理施設整備への支援助成は、産地活性化総合対策事業の「産地収益力向上支援事業」(食肉等流通合理化地区=107億400万円の内数、補助率は2分の1、3分の1、10分の1以内)や、「強い農業づくり交付金」(31億2700万円の内数、補助率は定額で、事業費の2分の1、3分の1以内)に含まれる。
畜産振興課の予算では、配合飼料価格の大幅な変動による畜産農家の経営に及ぼす影響を緩和するため、通常補てんで対処できない場合の異常補てん原資を、(社)配合飼料供給安定機構に積み立てる「配合飼料価格安定対策事業」は、異常補てん積み立て財源が21年度末で322億万円あるため、23年度は積み立てない。
飼料穀物の需給ひっ迫に対処するため、主原料の穀物を一定量備蓄する「飼料穀物備蓄対策事業」は13億7200万円(前年度41億9500万円)で、とうもろこし・こうりゃんを20万トン備蓄する。
農林水産省の戸別所得補償制度予算のなかで、飼料用米などを生産する農業者に補助する「水田活用の所得補償交付金」は2284億3100万円(22年度は2167億2900万円)。飼料用米の生産農家には前年度と同様、10アール当たり8万円を助成する。
また、飼料用米の農薬使用基準づくり支援の「飼料用米農薬安全確保対策」は2億6100万円(前年度4億4100万円)。事業実施主体は民間団体。
食品残さの利用拡大などを推進する「エコフィード緊急増産対策事業」は1億円(前年度は4億8800万円)。
畜産企画課の予算では、産地活性化総合対策事業のうち「家畜排せつ物の利活用による産地収益力向上支援事業」が107億400万円。これは、22年度まで実施している地域バイオマス利活用交付金(家畜排せつ物の利活用の支援)を拡充し、施設整備や、堆肥の有効利用に向けた取り組みを支援するもの(前年度65億1500万円)。
畜産に起因する苦情や環境規制の強化に適切に対処するために必要な浄化処理施設や脱臭施設の整備に2分に1補助する「環境と調和した畜産経営の確立」は、強い農業作り交付金31億2700万円(前年度143億8500万円)内に含まれる。事業実施主体は農業者団体など。

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