卵の保存温度と微生物増殖 10度Cでは問題なし 日鶏協が2研究機関で試験

卵を10度Cで保存すれば安全性に問題がなく、20度Cでも6週間程度までは問題がない――。(社)日本養鶏協会(梅原宏保会長)は、このほど国内の研究機関で実施した、サルモネラ菌(SE)を接種した鶏卵の微生物培養試験の結果をまとめた。国内の鶏卵の賞味期限表示の妥当性が改めて確認されたといえる。

サルモネラ菌に汚染された鶏卵内で、菌がどのように増殖するかについては、英国のハンフリー博士らの試験が有名で、10個以下のSE菌を卵内に強制接種した場合、20度C保存では30日を過ぎると急激に増殖するなどと報告されていたが、日本での同様な公的試験はなかった。
日本養鶏協会では、農林水産省の17年度「鶏卵安全・品質向上推進事業」の補助事業の指定を受け、北里大学獣医畜産学部人獣共通感染症学研究室と財畜産生物科学安全研究所に依頼して微生物培養試験を実施したもの。
いずれの試験も、通常では起こり得ない、SE菌を卵黄に近い卵白部分に強制接種し、保存温度の違いによる菌の増殖状況を調べたもの。
北里大学の試験では、鶏卵を10度C、20度C、30度Cに静置して調べたが、10度C、20度C保存では、6週間を経てもSE菌は増殖せず、4週以降はむしろ生菌数が減少した。10度C保存で5週間後、20度C保存で3週間後にそれぞれ1個ずつSE菌が増殖したが、これらは接種時に卵黄膜を損傷したものとみている。今回の結果から、「10度C保存であれば安全性には問題ないものと考えられる」としており、ハンフリーらの成績と大きく異なる結果となったことについては、SE株の違いや供試卵の違い以外に大きな相違はないことから、「成績が異なった原因は不明」としている。
この結果は、現在、国内で表示されている卵の賞味期限表示(パック卵では約二週間)がほぼ適切であることを示すものといえる。ただ、農場からGPセンター、小売店や業務・外食店、家庭までの卵の流通実態が違うため、北里大学ではその優良例として、農場から小売店までを20度Cで流通させ、家庭の冷蔵庫で10度C以下で保存するのがベストとしている。
(財)畜産生物科学安全研究所の試験では、保存温度20度C、25度C、30度CでのSEの増殖状況を調べたもので、20度Cでは、試験1は6週間後まで、試験2では4週間後まで増殖は認められなかった(ただ、5週と6週後の菌の増殖した異常卵は、卵黄膜近くにSEを接種した可能性があるとのこと)。25度Cや30度Cでは3週間以降に菌数の増殖がみとめられた、としている。
この結果について同研究所は、「卵の保存温度は20度C以下とし、6週間程度までが妥当であることが示唆された。これは万一、卵にSEがあった場合でも、この温度と期間内であれば問題は生じないことを意味するもの」としている。

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