緊急に発生防止策を 埼玉と茨城で新たにAI感染

茨城県の水海道市と茨城町の9農場で感染が確認された弱毒の鳥インフルエンザ(H5N2型)は、8月18日には埼玉県の採卵養鶏場でも抗体が確認され、さらに22日には、埼玉の農場に成鶏を供給していた茨城県の系列3農場でも抗体が確認された。関係者は感染の広がりを心配すると同時に、鶏卵の流通面や消費への影響を強く懸念し、発生防止策を緊急に講じるべきだ、としてている。

農水省と埼玉県は8月18日、全国一斉のサーベイランス検査の結果、埼玉県鴻巣市のイセファーム(株)堤向農場(採卵鶏9万8,300羽)で、過去に鳥インフルエンザに感染していたことを示す抗体が確認され、動物衛生研究所で40検体を精密検査したところ、29検体でH5亜型に対する抗体陽性が確認されたと発表した。
農場の鶏は殺処分が決まり、農場の半径5kmに移動制限区域が設定された。区域内には採卵養鶏場2戸と育成場1戸の計3戸、約34,000羽が飼養され、2戸の採卵養鶏場は検査によって陰性が確認されたため、20日から卵の出荷が可能になった。
堤向農場は、加工用の鶏卵を生産しており、成鶏を導入していた茨城県の系列3農場を検査したところ、石岡市三村のつくばファーム(約111万羽、ウインドレス12鶏舎)からは120検体中110検体、水戸市下野町のイセファーム涸沼農場(約16万2,000羽、開放9鶏舎)からは90検体中70検体、東茨城郡美野里町の同美野里農場(約80万羽、ウイドレス9鶏舎)からは190検体中160検体から抗体が確認された。石岡市の1鶏舎(約10万羽)からはウイルスも分離された。
農水省は22日に開いた「高病原性鳥インフルエンザ対策本部」で対応を検討し、開放鶏舎の涸沼農場の16万2,000羽と、ウインドレス鶏舎のつくばファームのうち、ウイルスを分離した1鶏舎、約10万羽は殺処分することにした。
ただ、抗体陽性を示した、つくばファームの残り約100万羽と、美野里農場の約80万羽については、(1)ウイルスが弱毒タイプで、鶏もほとんど症状を示さず、卵も食品衛生上、安全であること(2)ウイルスが容易に拡散しないウインドレス鶏舎で、適切な飼養管理が実施されていること――などから殺処分せず、定期的な検査(2週間に1回、1鶏舎当たり30羽のウイルス分離検査)で陰性が確認されている間は、鶏卵の出荷を認めることにした。今後、検査でウイルスが分離された場合は、その鶏舎ごとの殺処分となる。この鶏の最終的な取り扱いは、他の移動制限区域の農場とは区別して、アウトまで監視を続けたうえで、最終的に処理場で処理するか、殺処分するかを決める。
これまでは弱毒タイプのものでも、抗体陽性を示した鶏はすべて殺処分してきたが、今回、ウインドレス鶏舎に限って、例外とする方針に転換したことについて農水省は、「防疫上のリスクを高めない範囲内での合理的な措置」とする一方、「発生農場の経営に与えるダメージを最小限にした結果」ともしている。
今後、家きん疾病小委員会を開いて、弱毒タイプのウインドレス鶏舎の例外規定を防疫指針に明記する方針。
この決定を受けて茨城県は、殺処分の準備に入るとともに、それぞれの農場から半径5kmの移動制限区域を設定した。今回の区域は水戸市と美野里町、石岡市と茨城町で重複した部分もあるが、対象となるのは採卵養鶏場、ブロイラー農場、種鶏場など30農場で、約87万6,000羽。
鳥インフルエンザ対策は万全としていた、日本最大の鶏卵生産・販売会社のイセグループの系列農場で発生したことに、関係者は衝撃を受けている。しかも茨城県を中心に、次々と抗体陽性農場が出現していることから、発生農場はもとより、移動制限区域の養鶏関係者の被る経済的損失を心配する声が強い。
農水省がウインドレス鶏舎の鶏を殺処分しない方針に転換したことについては、「規模が大きいからといって殺処分にならないのはおかしい」「茨城県内のウイルスの実態をもっと検査したうえで対応を考えるべきで、ウインドレスだから拡散のリスクは低いとは必ずしも言えない。実態を確認しない段階での方針転換は、感染の広がりや、鶏卵流通・消費に与える影響などからも心配」「約207万羽も感染していたことは、ワクチンの使用なども真剣に考えないと今後、安心して養鶏が営めない」など、悲痛な叫びが聞かれる。

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